看護師が匿名で勤務先の内情を共有できる口コミサイト「ナスコミ」。求人票だけではわからない、生の職場情報が手に入るとして多くの看護師が注目しています。しかし、「口コミは本当なの?」「嘘が混ざっているのでは?」と疑問を抱く方もいるでしょう。ここでは、ナスコミの口コミに嘘が潜む可能性や、実際の運用体制、投稿者側の心理から見えてくる真実、そして前向きな活用方法をまとめてご紹介します。
結論:明らかな嘘は少ないが、「本当に知りたいこと」が書かれにくい
ナスコミには運営の厳しい監視体制があり、虚偽投稿や誹謗中傷的な情報は排除されやすいため、意図的な嘘が乱立しているわけではありません。たとえば福利厚生、休日数、昇給額など、数字で示せる客観的な情報は多くの口コミで整合性がとれており、信ぴょう性が高めです。
一方で、本当に知りたい「ヤバい裏事情」や「労基法的にグレーな問題」、公になっていない不祥事、極端な人間関係のトラブルといった情報は投稿しづらい仕組みがあります。そのため、「悪い実態がなさそう」に見える病院でも、実際は「書きづらくて載っていない」だけの可能性も考慮すべきです。
なぜ「知りたい裏事情」が書かれないのか?4つの理由
1. 厳しい運営チェックと規約制限
ナスコミは、「法律に違反するような事柄」や「公になっていない事故・事件」の投稿を禁止しています。事実であっても、病院側に大きな損害を与える可能性がある場合、修正や掲載不可の対応が取られます。実際には、投稿者が「本当のこと」を書いても運営から何度も修正依頼が入り、結局、歯切れの悪い無難な表現にせざるを得なかったという事例が報告されています。
ナスコミで事実を書いたら訂正してくださいってメールきた。嘘書けばいいのかい。
https://twitter.com/shoyu09292/status/1177476434454908931
ナスコミは事実を書いても不利益になる口コミは訂正を求められて掲載されない。
https://twitter.com/lady__winehouse/status/1239370154045104128
ナスコミで辞めたクリニックの評価を投稿してたんですけど、投稿内容の何が引っかかるのか、直しても直しても修正依頼が来るのなんでだろう?全部事実を書いてあるだけなんだけど。
https://twitter.com/jirai_nurse/status/1609899861025132546
法律に違反するような問題や、公になっていない事故、事件などに関する内容は投稿しないでください。ナスコミでは事実関係の確認を行うことが難しい上、場合によっては病院に大きな損害を与えてしまう可能性もあります。
https://ns-com.net/faq/
いわゆる「労働基準法的にアウトなこと」や「倫理的にマズいこと」があったとしても、ナスコミに情報は載っていません。
▼規約違反と警告された人の口コミ
ナスコミって、肝心な重要事実を書き込むと「規約違反です!」て修正させられるよね。
https://twitter.com/ok95kzt/status/1356244732133822467
「小児科医が過労自殺した病院(全国紙で報道済みの事実)ですが、その後、全く労働管理意識は改善されてません。新人は20時間労働です。」とか。別に個人を特定できるようなこと書いてないのに。
ナスコミ君に、当院の口コミ書いたら修正白修正しろって言われる。残業代はまじで上司が声をかけた人しか申請できないシステムだし、上司は自分でバンバン残業申請できるシステムで、下々の者は残業毎日してても1円も出ない世界なんだけど。何を修正しろと。
https://twitter.com/totohasakana2/status/1561958846050226177
2. 匿名でも完全に安全とは限らない特定リスク
ナスコミは一応匿名制ですが、病院名と勤務時期、配属部署、規模感、実際に起こった出来事を詳細に書けば、院内で誰が書いたか察しがつく可能性があります。看護師長や同僚が、たまたまその口コミを目にした場合、「このエピソードはあのときの〇〇さんだよね?」と特定されるリスクがゼロではありません。
特に地方や規模の小さい病院では、配属病棟や経験年数など少しのヒントで投稿者が推測される恐れがあり、看護師たちはリスクを負ってまで病院の「負の部分」を暴露したがりません。
3. 投稿削除不可でリスクが「後戻り不能」
ナスコミの大きな特徴として、自分が一度投稿した口コミは自分の意思で削除できない仕様があります。これにより、「後になって『やっぱりあれは書きすぎた』と後悔しても取り返しがつかない」状態になりかねません。
この後戻り不能性は、「もし病院にバレたら?」という恐怖を増幅させます。結果、わざわざ本音や問題点をさらけ出して自分にリスクを及ぼす必要がなく、当たり障りのない一般論的な記述で済ませる方が多くなります。
4. ポイント目当てによる当たり障りのない投稿増加
ナスコミは、病院の口コミを閲覧するためにポイントが必要で、ポイント獲得には自分も口コミ投稿が必要です。つまり、情報収集目的の看護師がポイント獲得のためだけに、内容の薄い投稿を量産する傾向が生まれます。この場合、病院の内情を深く分析したり、リスクを冒して真実を暴露する意味はありません。文字数を埋めればよいという発想から、「医師や看護師は優しい印象でした」「雰囲気は悪くなかったです」など、誰が書いても成立しそうな無難な文章が増えてしまうのです。
嘘ではなく、主観や一般論が多くなりがちな実態
上記の理由から、ナスコミには「嘘」ではなく「本質をぼかした記述」や「主観が強い、部署や時期によって差異が大きい情報」が増えやすくなります。人間関係や職場の雰囲気は、一人が「あまりよくなかった」と感じても、別の人が「すごく良い」と投稿することもあります。これは嘘ではなく、あくまで感じ方の違いです。
また、本当に深刻な労働問題があっても、規約や特定リスク、削除不可という事情から書かれず、表面的には「特に悪くない職場」と映ることもありえます。
それでもナスコミは役立つ!前向きな活用法
嘘や情報制限が懸念されるからといって、ナスコミが無意味なわけではありません。以下のような方法で活用すれば、転職活動の有効なヒントを得ることができます。
- 客観的な数字情報をチェック
休日数、昇給額、有給取得率などは複数口コミで共通点があれば信頼度が高まります。これは嘘をつく理由が薄い上に、実体験から比較的正確に記憶されるため、他情報源と照らし合わせると有用です。 - 複数人が似た指摘をするネガティブ情報を重視
たとえば「残業が多い」「人手不足で業務が忙しい」「定着率が低く退職者が多い」などが複数の異なる投稿者から指摘されている場合、それは隠しきれない事実である可能性が高まります。このような合致点は、現場の重要な特徴を示唆します。 - 視点を変えてポジティブな側面も確認
「教育体制がしっかりしている」「若いスタッフが多く活気がある」「ママさんナースが多く理解がある」といったポジティブ面は、求人票ではわかりにくい職場の強みを示します。こうした情報で、「この病院は自分のキャリアプランにマッチしそう」と感じられるなら、前向きな判断材料になります。 - 最終的には他の情報源と組み合わせて判断
転職サイトや知人経由、さらには職場見学で直接雰囲気を確かめることは、ナスコミ情報を補完する強力な手段です。ナスコミだけに依存せず、他の情報と組み合わせて利用すれば、真実に近いイメージをつかみやすくなります。
ナスコミを賢く使い、転職を有利に進める
ナスコミは、仕組み上どうしても「本当に知りたいマイナス面」を正直に書きづらい一面がありますが、それでも、職場雰囲気や残業の実態など、部分的には有益なヒントを得られます。嘘が乱立する場というわけではなく、むしろ細心の注意が払われた運営方針によって、極端な虚偽が少ない点は評価できます。
大切なのは、「ナスコミで得た印象を絶対的な真実としないこと」です。あくまで参考情報として用い、他の情報源や実際の見学を併用して、自分なりに総合判断する。このスタンスを取れば、ナスコミはあなたの転職活動を前向きにサポートしてくれる有用なツールとなるでしょう。
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